[時事寸語]= セクハラ市長の再出馬

 政治家の記憶は便利にできている。都合の悪い過去は「なかったこと」に、叱責の声は「激励」に変換されるらしい▼沖縄・南城市の古謝景春市長。職員へのセクハラ問題で市議会から不信任を突きつけられ、自ら議会を解散してまで延命を図った人である。その市長が、失職がほぼ確定的になった今、「次の市長選に出馬する」と胸を張った。本人曰く「セクハラはやっていない」「応援の電話が毎日届く」。これだけ聞けば、まるで誤解された英雄のようだ。だが現実は、市議選に立候補した二十五人のうち二十一人が不信任に「賛成」と答えている。支持者どこ ...

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[時事寸語]= 40年越しのブーメラン産経

 かつて「行革の旗手」を自任していた新聞が、今では「公務員が足りない」と紙面で嘆いている▼昭和五十八年のサンケイは、庁舎の滝の音にまで噛みついていた。人工の滝を眺める職員組合室を「税金のムダ」と糾弾し、冬時間で早帰りする公務員を「税金のタダ取り」と断じた。「行政への甘えを捨て、自立の精神を取り戻そう」「行革を妨害する議員を落選させよう」と、紙面の隅にまでスローガンを踊らせたあの筆致は、いま読むとほとんど戦闘声明のようだ。小さな政府こそ正義、職員削減こそ改革。公務員は「肥大した官」の象徴とされ、彼らを削ること ...

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[時事寸語]= 九十九里・セブンアイランドの夢

 一九九〇年、バブルの熱気がまだ街を包んでいたころ——千葉の太平洋岸に“夢の群島”が描かれていた▼その名も「九十九里セブンアイランド構想」。鹿島建設が中心となって構想した、六千ヘクタールに及ぶ七つの人工島群。そこには、二十四時間稼働の海上空港、石油備蓄と発電を担うエネルギー島、東京港の機能を分担する巨大物流拠点、そしてゴルフリゾートやマリンシティまで並ぶ予定だった。九十九里の沖合に浮かぶ未来都市。東京湾岸の過密を解き放ち、日本経済をさらに“夢の時代”へ押し上げるはずの計画だった▼もし実現していたら——そう考 ...

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[時事寸語]= 朝三暮四の暫定税率廃止

 ガソリンの暫定税率が、ついに年末で廃止される▼物価高に苦しむ家計にとって、一リットル二十五円の値下げは確かに朗報に聞こえる。一世帯あたり年一万三千円の負担減——それだけを見れば「生活支援」として拍手喝采かもしれない。だが、安堵のガソリン臭にまぎれて忘れてはならないのは、一兆五千億円という税収減である。政治がその代わりを何一つ示さぬまま、「とりあえず安くする」ことだけを決めた。財源の検討は“来年以降”。朝三暮四の猿も、ここまで先送りはしない▼暫定税率は、七〇年代のオイルショック以降、道路整備の財源確保のため ...

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[時事寸語]= 提灯報道のための記者クラブ

 記者クラブほど、この国の報道の堕落を象徴する仕組みはない▼本来は「権力を監視するための取材拠点」。だが、実際は権力の庁舎の中に机を並べ、空調の効いた部屋で“発表メモ”を受け取る場所と化している。警察庁舎の中に設けられたクラブ室では、記者たちが“お上”の指導を受けながら記事を書く。批判すれば出入り禁止、質問が過ぎれば次の会見で無視される。公的機関の広報課と報道各社が「発表文」を共に整えるその構図は、民主主義の風上にも置けない▼「報道の自由」を唱えるメディアほど、この閉鎖的談合に深く依存している。官邸、警察、 ...

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[時事寸語]= 異常な警察不祥事

 今年の警察不祥事は、もはや“異常”という言葉でも足りない▼大阪府警では、裏付け捜査もないまま誤認逮捕を行い、42日間も市民を勾留。暴行を加えた警官が法廷で「職務範囲を超えてしまった」と反省を口にし、福岡では幹部が2千人以上を盗撮。高知では下着の盗撮が千回、東京では勤務中に高齢者の金を盗み、兵庫では交番で8人がスマホゲームに熱中していた。しかもこれらが同じ年に起きたのだ。組織ぐるみの腐敗と言わずして何と言おう▼だが、事件後に並ぶ言葉はいつも同じだ。「言語道断」「指導を徹底し、再発防止に努めます」。まるでテン ...

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[時事寸語]= 相次ぐ警察不祥事とマスコミと

 警察の不祥事が、もはや例外ではなくなっている▼大阪では警部補が個人情報を警察OBに漏らし、福岡では性犯罪捜査の元幹部が二千人超を盗撮していた。家宅捜索の現場で暴行を加えた捜査員は起訴され、佐賀ではDNA鑑定の不正。鹿児島では内部改革を掲げながら、第三者検証は拒む。国家の秩序を守る最後の砦が、今や法を破る側に回っている。再発防止の言葉が聞こえるたび、国民の信頼は一段ずつ崩れていく▼「警察への信頼が揺らいではならない」と語る国家公安委員長。だが、揺らいでいるのは信頼ではなく、もはやその言葉の重みそのものだ。監 ...

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[時事寸語]= 若者の自殺大国ニッポン

 子どもも若者も、次々に命を絶つ国になってしまった▼政府は「自殺対策白書」を閣議決定したと胸を張る。だが、閣議の机上で紙が増えるほど、現実の命は減っていく。数字は整い、表は更新される。だが、五年連続で若者の死は三千を超え、小中高生は五百二十九人。オーバードーズに倒れた若い女性たちは、もう「統計」の列に並んだ。命を数えることには熱心だが、救う手はあまりに冷たい▼「原因分析」「包括的支援」「相談窓口」──白書に並ぶ言葉のどれもが、すでに骨抜きである。統一ダイヤルは鳴り続け、いのちの電話はつながらない。相談員は高 ...

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[時事寸語]= 裏金内閣の行く末

 裏金が、政治を動かす燃料になった▼高市内閣が発足して間もないというのに、登用されたのは「裏金議員」たち。副大臣や政務官に七人、党要職にも八人。総務部会長から改憲本部長まで、名簿のどこを見ても旧安倍派の影が濃い。国民が忘れたふりをするのを待っていたかのような、堂々たる復権劇である。説明責任は果たしたというが、「知らなかった」「秘書がやった」で幕を閉じるなら、どんな不正も決着済みになる▼「適材適所の人事」と官房長官は言った。確かに、金を扱うには慣れた人材かもしれない。だが、扱うのは公金であり、裏金ではないはず ...

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[時事寸語]= 大袋の母子の死

 東武線の線路に、若い母子が倒れていた。列車の警笛も、秋の朝の光も、彼女たちを引き止めることはできなかった▼通勤の列に紛れた九時台のホーム。母と子が最後に見た風景を想像すると、胸の奥に冷たい風が通り抜ける。報道は淡々と「第三者の関与なし」と伝えた。だが、見えぬ“社会”という第三者が、この母子を追い詰めてはいなかったか。誰もがその答えを知っている▼「自殺」と一言でくくられるたびに、背景がこぼれ落ちる。孤立、貧困、育児の重圧、支援の不在。行政の窓口は増えたが、心に届く言葉は減った。母親が助けを求めても、電話は鳴 ...

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