[時事寸語]= セクハラ市長の再出馬

[時事寸語]= セクハラ市長の再出馬

 政治家の記憶は便利にできている。都合の悪い過去は「なかったこと」に、叱責の声は「激励」に変換されるらしい▼沖縄・南城市の古謝景春市長。職員へのセクハラ問題で市議会から不信任を突きつけられ、自ら議会を解散してまで延命を図った人である。その市長が、失職がほぼ確定的になった今、「次の市長選に出馬する」と胸を張った。本人曰く「セクハラはやっていない」「応援の電話が毎日届く」。これだけ聞けば、まるで誤解された英雄のようだ。だが現実は、市議選に立候補した二十五人のうち二十一人が不信任に「賛成」と答えている。支持者どころか、味方は四人しかいない。数字は残酷だ▼しかも議会の解散には約二千五百万円の公費がかかっている。自らの進退を賭ける覚悟のはずが、結局は市民の財布を担保に取っただけだ。市長派の議員が足りず、再び不信任が可決されれば、自動的に失職。そして「潔く退く」どころか、再出馬である。失職から出馬までのこの俊敏さ、行政では滞る書類も、政治家の自己弁護だけは異様に速い▼彼の言う「やっていない」という言葉の重さも軽い。セクハラを告発した職員たちの苦痛も、議会の判断も、市政の混乱も、すべて「誤解」として一蹴する。もはや事実認定より「支持の有無」が正義を決めるのだろう。票を得れば免罪、批判されれば陰謀。地方自治がこれほどまでに“感情政治”に堕していることの象徴である▼市民にとっては迷惑千万だ。再選されれば「やっていない市長」が復職し、落選すれば「誤解された市長」の補選が待つ。いずれにせよ、市政は再び混乱し、傷つくのは現場の職員と納税者だ。責任を取らない人間が責任者を名乗る。地方自治の崩壊は、いつもこうした小さな町から始まる▼それでも古謝市長は言う。「魅力ある街づくりを継承する」と。確かに、全国ニュースになるほど話題の尽きない街にはなった。だが、残念ながら“魅力”ではなく“迷惑”の方である。公費二千五百万円の選挙を繰り返し、ハラスメントで注目される街——これを「継承」したいというのだから、ある意味で一貫している。

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