[書評・マスコミ論評]=1 北海道警裏金事件後の新聞の自殺 警察を追及した新聞社の興亡と新聞が自殺した日

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◇ 捜査報償費について

 捜査報償費は、正確には「捜査用報償費」と「捜査費」の二種類がある。捜査費は都道府県の予算から計上され、捜査費は国費が使われる。多くの都道府県の規定では、職員の着服や横領を防ぐために領収書の添付が必要となっている。費用は都道府県によって異なり、名称も違うが、例えば東京都の場合は「警察参考人等に対する費用弁償に関する条例」が制定されていて、交通費や宿泊費のほか、日当一万円が支給される。この金額を受領した場合、領収書を求められる。区分は違うものの、両者を含めて一般的には捜査報償費と統一されて呼ばれることが多い。

東京都の捜査用報償費領収書の例

◇ 捜査報償費を巡る不正

 道警で発覚した事件は、この領収書を偽造し、警察職員が着服、横領していたものである。方法は先の住民の名前を使った捏造のほか、架空の事件をねつ造し、それに見合った金額を不正にねん出した。すでに死亡した人の名前を使って領収書を作った。果ては捜査出張そのものをでっち上げ、不正に横領したなどその手法は枚挙にいとまがない。本来、捜査報償費は捜査協力者などに支払われるものだが、その費用を警察職員が不正に流用していたのがこの事件の本質である。しかし、その方法や使途はおよそ常識からかけ離れている。警察署長のせん別代、懇親会費、冠婚葬祭費、飲食費のほか、接待費や議会対策にまで使用されていたという。いうまでもなく、その原資は国民の税金であり、法を守るべき警察組織が巨額の税金を、発覚しただけでも当時、二億円以上使っていたことになる。

◇ 北海道新聞の方針設定
 この事件を最初に報じたのはテレビ朝日系だったが、その後地元紙の道新が裏金問題を追及する報道班を設置した。最初に記事が掲載されたのは十五年十一月だったが、読売、朝日、毎日といった全国紙は早々に追及の手を弱めていった。しかし道新はそれに同月二十五日の記事掲載から、道警の追及キャンペーン報道を始める。
 高田氏の著によると、朝日や毎日が最初に掲載したのが二十四日で後追い記事となったが、それより前に噴き出していた同庁汚職事件(平成七年)のころから、同庁職員が「なんで同庁ばかり狙うんだ。道警も裏金を作っている」と話し、また当時捜査報償費の額が書かれたメモも作っていたといい、道警の裏金作りは今に始まったことではなく、相当前から組織ぐるみで続いていると確信した。
 道新は裏金事件の報道班を設置した。設置時の会議では「道警を敵に回したら事件事故のネタも取れなくなる」と道警回りの記者から危惧する声も上がったが、「捜査の途中経過を伝えることに偏重するよりも、裏金取材のほうが重要である」と方針を固め、追及キャンペーンが始まった。この報道は約一年半に及んだ。

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