[時事寸語]= 東急田園都市線脱線事故

[時事寸語]= 東急田園都市線脱線事故

 深夜の東急田園都市線で、回送列車と普通列車が衝突し、脱線――。幸い負傷者は出なかったが、翌朝の駅には慌てた通勤客があふれた。事故の発端は、見習い運転士によるうっかりミスだったという。鉄道会社も「ワンマン化」で人手不足を補う時代、いまや列車の安全は“熟練の感覚”から“システムの隙間”へと移りつつある▼規定速度を超えた信号を受け、回送列車は所定より手前で止まり、最後尾が進路にはみ出す――教科書通りの「ヒューマンエラー」だ。だが、現場の車掌や助役の「目と声」はすでに過去のもの。コスト削減と効率化の大号令のもと、「ワンマン運転」は都市部の常識となった▼運転士一人に任される責任は年々増すが、見習いが増え、現場は薄氷の上。ホームドアや監視モニターに頼るシステムは、肝心な時ほど「人の直感」を置き去りにする。昔なら車掌が乗務員室に立って目を光らせていたが、いまや画面の向こうで警告音が鳴るだけ▼遅延証明書を受け取る通勤客。「とんでもないことになっていて慌てて来た」。安全神話の裏で、現場の“うっかり”が都市生活を大きく揺らす。鉄道の「信頼」は、効率化と人員削減の二重奏にかき消されていく▼もちろん、システム化そのものを否定するつもりはない。だが、現場の経験や二重三重のチェック体制を「コスト」と見なした途端、ヒューマンエラーは「運転士の責任」として個人化されていく。組織としての安全意識は、どこへ消えたのか▼都市鉄道の夜の事故。目立たぬ“車掌不在”のリスクは、いまも闇の中。朝のラッシュのホームでふと思う――この「効率化」は誰のためなのか、と。

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