[時事寸語]= TOKYOの鉄の女の「働き方」

[時事寸語]= TOKYOの鉄の女の「働き方」

 高市早苗氏が自民党新総裁に就任した。「TOKYOの鉄の女」と呼ばれ、強いリーダー像が期待されるが、その口から出たのは「ワーク・ライフ・バランス(WLB)を捨てる」という言葉だった。昭和の働き方を彷彿とさせる宣言に、祝福の拍手もどこか乾いて響く▼高市氏は「働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく」と繰り返した。過労死防止法が全会一致で成立した国の新しいリーダーが、「馬車馬のように働け」と言う時代錯誤な姿勢を示す。かつての右傾姿勢と重ね合わせると、その“強さ”が何を守り、何を壊すのか問わずにはいられない▼遺族や専門家からは「命より大切な仕事はない」「時代に逆行した発言」と驚きと落胆の声が上がる。働きすぎの果てに命を落とした家族を持つ人々にとって、国のトップが「休むな」と宣言する社会は、ふたたび不幸の再生産を促しかねない▼欧州では、休暇や育児、男女平等のためのWLB推進が法制化されている。トランプ氏でさえ休暇を取る時代に、日本のトップは「休まぬ覚悟」を示す。時流に背を向けて「前進」だけを唱える姿は、まるで古びた教訓の復唱だ▼国会議員への“総力結集”の呼びかけも、かつての「戦後復興」や「高度成長」をなぞるようなもの。だが、その影には過労死、精神疾患、家庭崩壊という現実が横たわる。働くことの意味を、もう一度問い直す時代に来ているのではないか▼「強い日本」を掲げる新総裁。その強さが、休みなく働き続ける「鉄の歯車」を意味しないことを願う。国民の命と生活を守る覚悟が、「WLBを捨てる」覚悟を上回る日が、果たして来るだろうか。

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