[時事寸語]= 制服を着た犯罪者、腰抜けのマスコミ

[時事寸語]= 制服を着た犯罪者、腰抜けのマスコミ

 制服を着ていれば、正義の側にいるとでも思っているのか。「警察官がスカウトグループに情報を漏らした」――この見出しに、もはや驚きはない。驚かない自分に驚くほど、警察の堕落は繰り返され、常態化した。警視庁暴力団対策課の警部補神保大輔(四三)。彼が漏らしたのは、捜査用カメラの位置リストや監視映像、つまり“国家の眼”そのものだ。しかも、相手は性搾取の温床「ナチュラル」。公費で設置された監視カメラの映像が、裏社会の手に渡り、少女を狩るためのツールになっていたのだから、これはもう「裏切り」ではなく、犯罪組織の一員だ▼警察は「単独犯だ」「組織的関与はない」と言う。だが、アクセス権を四月以降も保持し、担当を外れても情報を閲覧できたという杜撰さは何なのか。癒着を防ぐ仕組みが「ある」と言いながら、誰も機能していない。情報管理も監督も抜け穴だらけ。それでも「再発防止に努める」と言い切る。いったい何度目の再発防止だろう。暴力団の金で動いた警察官が現れ、そのたびに「遺憾」と言って終わる。制服を着ていようが、やっていることはスカウト屋と変わらない。違うのは、給料が税金から出ていることくらいだ▼この事件、裏社会の人間たちは笑っているだろう。「内部にスパイがいる」――警察が五年かけて構築した捜査網は、たった一人の裏切りで崩れた。逮捕予定の幹部が逃げ、数億円規模の違法スカウトビジネスは今も動く。現場の捜査員が命懸けで張り込む中、同僚が金を受け取って情報を売る。腐臭は内部から始まる。神保容疑者の自宅から見つかった現金九百万円。その札束の重みを、彼はどう感じたのだろうか。裏社会と癒着する官の構図は、もう暴力団よりも暴力的だ▼それでもマスコミは腰が引けている。記者会見では「警視庁の信頼を損なう」と警務部参事官が述べた、と淡々と書くだけ。だが、信頼を損なったのは事件ではなく、報道の方だ。警察発表をそのまま垂れ流し、どこにも追及がない。再発防止策も、処分も、裏金も、誰も掘らない。制服を着た犯罪者を糾弾できないなら、ペンを置け。記者クラブの机に座って官の説明を写すだけなら、それは報道ではなく 速記だ▼制服を着た犯罪者と、ペンを置いたマスコミ。どちらも同じ穴のムジナだ。市民の「知る権利」を守るどころか、権力の失態を隠す手伝いをしている。警察が腐るのは仕組みの問題、だがマスコミが腐るのは自尊心の問題だ。正義を語る資格を失った制服と、真実を伝える気概を失った報道。どちらもこの国の“治安”を蝕む存在に成り下がった。もう、呆れすら通り越している。信頼という言葉がこれほど薄汚く聞こえる時代は、戦後でもなかった。

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