[時事寸語]= 早苗サンの四面楚歌

[時事寸語]= 早苗サンの四面楚歌

 高市早苗という名の首相がいまや立っているのは、まさに四面楚歌の舞台である。味方はどこにもおらず、響くのは国際社会のため息ばかり。台湾有事を“存立危機事態”と口にして以来、日中関係は崩れ、経済・文化・観光すべてが冷え込んだ。クルーズ船は日本を避け、ベトナムへと航路を変える。航空便も減便の連鎖。中国大使館は「渡航を控え、安全に注意せよ」と繰り返す。まるで日本全土が危険地帯に指定されたかのようだ。それでも首相は、「自由で開かれた国際秩序を守る」と胸を張る。だが、開かれたのは日本から人が出て行く航路ばかりである▼そして驚くべきことに、頼みの綱であるはずのアメリカからも“忠告”が届いた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、トランプ大統領は電話会談で「台湾に関する発言を抑制せよ」と釘を刺したという。貿易交渉を前に、中国を刺激して余計な火種を撒くなということだ。これが事実なら、同盟国の首脳が同盟国の首相に「黙っていろ」と言ったに等しい。日本政府は「そのような事実はない」と抗議したが、抗議の裏で記事の撤回は求めなかった。つまり否定しながら、どこかで図星を感じているのだろう。四面楚歌の中で唯一残った“友軍”からさえ「静かにしてくれ」と言われるのだから、皮肉というほかない▼外交とはバランスの芸術である。だが高市流の外交は感情の衝突実験だ。発言を威勢よく放ち、相手が怒れば「毅然としていた証拠」と胸を張る。その結果、周囲は皆距離を取る。中国は敵視し、香港は交流を凍結し、アメリカは困惑し、東南アジアは沈黙する。国連では日本の弁明書簡が空回りし、事務総長の報道官から「対話で緊張を緩和せよ」と諭される始末だ。かつて日本が積み上げてきた“信頼外交”は、たった一人の政治家の声量によって音を立てて崩れていく▼さらに恐ろしいのは、国内の多くがこの事態を“毅然とした日本の姿”と錯覚していることだ。外交の孤立を「自立」と呼び、批判を「嫉妬」と決めつける。四面楚歌の中で唯一残るのは、国内メディアの擁護と一部支持層の拍手だけ。だがそれは、孤立を拍手で包み隠す音にすぎない。首相自身もまたその錯覚に酔いしれ、孤独を勇気と取り違えている。かつての「戦後レジームからの脱却」が、今や「現実からの脱却」になってしまった▼高市早苗という人間は、もはや“政治家”ではない。外交を破壊し、国内を分断し、世界の笑い者となりながらも、そのすべてを“成果”と信じる信仰者だ。四面楚歌の中でなお歌い続けるその声は、もはや国の未来を導く歌ではない。耳を塞ぐ世界と、拍手する国内。どちらも沈黙の先にあるのは孤立という名の結末だ。――“早苗サンの四面楚歌”、それは日本がいま抱える外交の現実を、これ以上なく象徴している。

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