[時事寸語]= 今年の警察不祥事

[時事寸語]= 今年の警察不祥事

 年の瀬が近づくたび、「今年の漢字」が話題になる。警察にそれを当てはめるなら、迷うことなく「不」だろう。不正、不祥、不信、不透明――どれを取ってもぴったりだ。二〇二五年、全国の警察は事件を捜査するより、身内の処分に追われていた。鹿児島ではゲームと酒と情報漏洩。兵庫では勤務中の恋愛とオンライン対戦。佐賀ではDNA鑑定を捏造し、東京では冤罪を量産。どれも笑えない現実だが、本人たちは案外楽しそうに見える。「ここまで大ごとになるとは思わなかった」と言い残す巡査の言葉が、今年の警察を象徴している▼組織は懲戒処分を「再発防止策」と呼ぶ。だが、その再発防止策を再発防止するための会議が、すでに毎年開催されている。岩手県警では「職務倫理の徹底」を訓示し、佐賀県警には「特別監察」が入った。警視庁は大川原冤罪で「重い処分を検討」と言いながら、減給二人で幕引き。これで倫理が戻るなら、道徳教育など不要だろう。倫理は研修で学べるものではない。失ってなお「意識が高まった」とアンケートで答える鹿児島県警の能天気さに、むしろ希望の無さを感じる▼不祥事の構造は単純だ。警察は「内部の恥」を外に出したがらない。だから性犯罪も賭博も「私的な事案」として闇に葬られる。懲戒免職になっても公表せず、「被害者のプライバシーを守るため」と言い訳する。守られているのは被害者ではなく、加害者と組織の体面だ。報道もそれを鵜呑みにし、事件を「公表されなかったこと」として小さく伝える。誰も怒らず、誰も笑わない。沈黙の警察、沈黙のマスコミ。結果、狂気は制度の中で合法化されていく▼思えば、今年だけで警察官の「懲戒処分」は全国で百五十人を超え、過去十年で最多。だが、処分の文言はどれも定型化している。「誠に遺憾」「厳正に対処」「再発防止に努める」――この三点セットを読むたび、国民は安心する。なぜなら、何も変わらないことを知っているからだ。警察とは、信頼を失っても解体されない数少ない組織である。どれほど腐敗しても、「必要悪」として生き延びる▼もうすぐ年末。警察は年頭訓示で「信頼回復に努める」とまた口にするだろう。だが、その翌日には誰かが飲酒運転をし、翌週には誰かが同僚を触り、翌月にはまた冤罪が生まれる。年は変わっても、中身は同じ。来年も「再発防止」が再発し、「倫理研修」が恒例行事となる。警察のカレンダーには、きっとこう書かれているはずだ――「今年も無事に、不祥事の年を締めくくれますように」。

コメントを投稿する

メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。 * が付いている欄は必須項目となります。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

ページの先頭