[時事寸語]= 狂った警察

[時事寸語]= 狂った警察

 警察が狂っている――と書くと過激に聞こえるかもしれない。だが、冷静に列挙してみれば、それ以外の言葉が見当たらない。詐欺、盗撮、偽造、賄賂、暴力。制服の色を脱げば、ただの犯罪者だ。高知県警では警察共済を騙して千五百万円を詐取した巡査長が懲戒免職。鹿児島県警では他人の尻を撮影した警官の処分を「公表する事情がなかった」と隠蔽。警視庁築地署の巡査部長に至っては、偽造免許証で銀行口座を作り、特殊詐欺グループに売り渡していた。犯罪被害金は七千万円。もはや「信頼回復に努める」という言葉の方が犯罪的だ▼かつて制服警官が女子大生を殺害した一九七八年の北沢署事件では、当時の警視総監が減給、署長が辞任し、国家賠償が行われた。だが、今や「本部長が訓示して再発防止を誓う」で終わりである。詐欺も盗撮も免職で幕引き。組織の病は人事ローテーションで隠蔽され、警務部の“綱紀粛正”が形式的に繰り返される。まるで宗教の儀式のように。警察は反省することをやめ、謝罪する技術だけを磨いた▼それでもマスコミは「断固とした決意」「信頼回復に努める」といった定型句をそのまま報じる。かつて警察を追及した記者はいま、署長会見でうなずき、記者クラブで配られた紙をそのまま写す。裏金事件を暴いた新聞が“おわび”で自殺してから二十年。報道は権力の目線に完全に同化した。鹿児島県警の「公表しない判断は不適当でない」という発言も、異論なく記事の一段落に収められる。批判が消えた社会では、狂気が常識の仮面を被る▼なぜ警察はここまで壊れたのか。理由は簡単だ。誰も監視していないからだ。公安委員会は追認機関に成り下がり、議員は選挙区の“治安票”を恐れて沈黙する。内部告発者は左遷され、マスコミは出禁を恐れて沈む。こうして警察は「法の執行者」から「法の管理者」へ、さらに「法の所有者」へと進化した。取り調べ室の中だけでなく、社会全体が“密室”になった▼狂気は静かに広がる。懲戒免職が史上初の二件? 笑わせる。懲戒が二件しか公表されないだけだ。現職警官が詐欺に走り、盗撮し、偽造免許を作り、共済を騙す。だが警察は今日も自らを“聖域”と呼ぶ。報道はそれを「不祥事」と柔らかく包む。もはや狂っているのは警察だけではない。狂った権力を見て、何も言わない社会――その沈黙こそが、最も危険な犯罪なのだ。

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