[時事寸語]= 青森テレビのパワハラ社長辞任

[時事寸語]= 青森テレビのパワハラ社長辞任

 青森テレビの社長が辞任した。理由は「パワハラ」。説明はそれだけで十分らしい▼暴言、恫喝、圧迫面接――報道の語彙に並ぶのは、ニュース原稿でしか見ないような言葉だが、使われた現場は報道機関そのもの。テレビ局が自らの内部崩壊をニュースで伝えるという、なんとも倒錯した構図である。社員の三割が退職したというのに、「事実を確認した結果」と淡々と発表するのがまた報道らしい。事実は伝えるが、感情は伝えない▼社長はもと報道部出身のキャスターだった。「言葉のプロ」が「言葉の暴力」で辞任する――この皮肉をどう伝えるのか。放送倫理を語る番組で、かつて彼の声を聞いた人も多いだろう。ニュースで怒鳴っていたのではなく、社内で怒鳴っていたと知る日が来ようとは。視聴者に正義を説く一方で、職場では「ばか野郎」「うるせじゃ」と怒号を響かせていたという。報道の光は、なぜ内側を照らさないのか▼調査報告では「不適切な言動」とある。あいまいな日本語ほど便利なものはない。怒鳴る、恫喝する、圧迫する――それらを包み込んでしまう魔法の言葉である。民放連の会見で「再発防止に努める」と述べる幹部の顔は、どこか報道資料を読み上げるアナウンサーのようだ。再発防止とは、いつも再発の後にしか登場しない言葉である▼テレビが権力を監視する――その看板は、いまや自分たちに向けられるべきだろう。企業不祥事を報じるたび、「ガバナンスの欠如」と口にするが、その言葉を鏡に映してみたことはあるか。報道の自由の前に、職場の自由は守られているのか▼ニュースは「社長辞任」で終わった。だが物語はそこで終わらない。声を上げた社員たち、黙って去った人々、彼らの沈黙こそが本当のニュースだ。言葉の暴力を許した報道機関が、どんな言葉で「報道の使命」を語るのか。次の放送を、静かに見守りたい。

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