退職届を出した日、空は晴れていた。皮肉にもそんな日だった▼長く勤めた現職から離れた。理由はいくつかあるが、決定打はなかった。ただ、静かに、確かに、自分の中の何かが終わったのだと感じた。ふとしたきっかけで、かつて働いた某社への復職話が持ち上がった。話は早かった▼九月の中旬には方向性が固まり、十月末までは出勤不要という妙な猶予が生まれた。この空白を、休息と見るか宙ぶらりんと見るか。最初は手放しで喜んだが、意外にも落ち着かない。働くことに慣れすぎた身体は、急に自由を与えられても、うまく使いこなせないらしい▼秋が深まる。気温とともに気持ちも下がり気味になるこの季節に、職場もないとなると、存在の軽さが際立つ。朝の支度をしても、行く先がない。手持ち無沙汰に掃除を始めては、意味のないことに意味を探してしまう▼それでも来月には、新しい勤務先が待っている。地方から始まり、いずれは東京へ。知らない顔ぶれに囲まれながら、懐かしさとともに歩む日々が、そこにあるだろう。再び社会に交じる前に、少しでも自分を取り戻しておきたい▼人生はリハーサルのない舞台だという。ならばこの「空白」は、せめて呼吸の間(ま)であれ。疲れを脱ぎ、希望を纏い直す時間にしたい。人はいつでも、季節とともに立ち直ることができるのだから。

![[時事寸語]= 来月への不安とゆくえ](/image/template-header.jpg)